介護の現場を通して予防の大切さを体感
私はこれまでに、いろいろな形で歯科衛生士の仕事に携わってきました。一般歯科はもちろん、保健センターや介護施設で働きながら口腔ケアをしていた時期もあります。そうした経験の中で身をもって実感したのは、いかに予防が大事なのかということ。口腔ケアの大切さを、教科書上には書かれていないくらいまで深く体感し、その根強い思いがサロンを開業するきっかけになったんです。
たとえば介護施設で、「認知症にならないようにしましょう」「誤嚥性肺炎を防ぎましょう」ってお話したとしますよね。ところが実際は、そこから今の状態を維持することはできても、体調が悪くなる前には絶対に戻れない。一生懸命ケアをしたからといって“元気”になるわけじゃないんです。ただ、もし病気が発症する前にきちんと口腔ケアを続けることができていたら、そのまま健康でいられたかもしれません。健康寿命が延びて、その方の人生を好転させることができたかもしれないんです。
日本のオーラルケア事情はまだまだ遅れているので、お口の健康がどれだけ大事かはもっと伝えていかなければならないし、未病の段階からオーラルケアを意識できるようにデンタルIQを高める必要もあります。その「やりたいこと」が私はどうしても曲げられなかったので、サロンを立ち上げたという感じですね。
医療とは違う面からサポートできる場所に
本当は歯科医院でやってもよかったのですが、現場でできることってやはり限られてきます。ベースは治療になってしまうというか、食いしばりがあっても「マウスピースをつけましょう」って対症療法だけになってしまいがち。そもそもどんなストレスがかかって食いしばっているのか、顎の痛みはどう解消したらいいのか。歯科衛生士として伝えられることはもっといっぱいあるはずなんです。そこに時間も労力もちゃんとかけたいとなった時、私にとってベストなスタイルだったのがデンタルサロンを開くこと。自分で自分の歯を守れるように、医療とは違う部分からサポートできる場所を作ることでした。
今、私がターゲットとしているのは、私自身も含めた40代の女性。自分のことを大切にしたいと思いつつ、まだ予防がそこまで発展していなかった時代に育ったため「歯医者さん=怖い」が抜けきれていない世代です。歯科医院でのアプローチと同じようにむし歯や歯周病の観点から伝えても響かないので、切り口は美容や健康面から。きれいな歯を保つホワイトニング、食いしばりや顔のたるみを解消するヘッドスパなどを中心に提供しています。当サロンとの出会いをきっかけに口腔内に興味を持って、歯科医院へ通う抵抗をなくしてほしいというのが目的です。
とにかく口腔ケアを楽しんでもらいたいので、提案する予防アイテムにもこだわっていますよ。デザイン性のないただの安い歯ブラシじゃ、魅力を感じないじゃないですか。なかでも私が推しているのは、汚れ・食べかすを吸着除去してくれる洗口液の『プラクリア』とワンタフトブラシの『ジャスライ』。自分でも使ってみて、機能性だけでなく、キラキラした感じが気持ちを後押ししてくれそうだなと思って取り入れています。
80歳になっても仕事は続けていると思う!
今後、少子高齢化がますます加速していくなかで、健康を意識するってすごく大事になってきます。国民一人ひとりが口腔ケアをすることが当たり前になって健康寿命が延びたら、介護の負担も軽減するし、医療費削減にもなる。私たち歯科衛生士が積極的に働きかけることで、社会のさまざまな側面に貢献できるんですよね。私の夢はサロンを拡大させていくことではなくて、この活動を通して口腔ケアを広めること。そこに、自分の存在意義を見出したいんです。
自分の夢が押し付けになっているんじゃないか、自分がやろうとしていることは果たして役に立てているのだろうか。正直、そうやって悩むこともあります。一方で、「あなたにもっと早く出会えてたら私の人生ちょっと違ったかも」みたいな言葉をかけていただけることが何度もあります。私たちが働きかけなかったら、日本の口腔ケアに対する状況は何も変わりません。だからこそ、自分がやるべきと感じたことはしっかり行動に移していかなきゃと思うんです。
歯科衛生士の仕事にプライドを持って取り組む。それが、私の信念ですね。こうして自由に働ける環境があることはありがたいし、世の中の人たちにできる限り還元していきたいです。きっと、80歳になってもこの仕事は続けていると思います。
<歯科衛生士・服部の編集後記>
今回、フリーランスという働き方を選んだ歯科衛生士さんがどんな思いで仕事をしているのかを伺いたく、池田さんにお話を聞きました。
取材を通して印象に残ったのは、「フリーランスになること」そのものが目的ではなく、「自分がやりたいことを実現するために、この働き方を選んでいる」ということ。
働き方に正解があるのではなく、自分が歯科衛生士として何をしたいのかを考えることの大切さを、改めて感じた取材でした。