予防法は、“歯磨き”が全てじゃない
「歯磨きさえ頑張っていれば、歯は守れる」。そう思って、一生懸命TBIをしてきました。
でも数年前にだ液検査を導入して、いろんな患者さんを診ていくうちに気づいたんです。“歯磨きができているけどむし歯が多い患者さん”“細菌が多いけどむし歯が少ない患者さん”など、いろんな方がいることに。「なんでこの方はむし歯になったんだろう?」と調べていくと、生活習慣や唾液の質に問題があったりするんですよね。
こうした経験を繰り返すうちに、「歯磨きが全てじゃない」と考えるようになりました。むし歯のリスクは、細菌や唾液の量や質、食生活、治療経験など、いろんなところに潜んでいる。だから予防法も“歯磨きを頑張る”だけじゃないんですよね。食生活にリスクがあったらそこを見直すとか、唾液が少ないならガムを噛むとか。患者さんのリスクに合った予防法はたくさんあるとわかったんです。
この気づきがあって、働き方が大きく変わりました。今は患者さんとコミュニケーションを取りながら一緒にリスクを探り、予防法を考えることを大切にしています。おかげで患者さんにもいい変化が起きるようになりました。
患者さんのリスクに合った予防法を
たとえば、1年ほど前に来院された60代の女性患者さん。口腔内をチェックすると、ほとんどの歯が治療済みでした。ですが歯磨きへの意識は高く、細菌の量もそこまで多くない。「何が原因なんだろう?」と一緒に考えていきました。
「細菌の数は普通ですよ。どうして今までむし歯ができてしまったと思いますか?」
そう問いかけてみると……。
「甘いものが好きで、ちょこちょこ食べているんですよね」
「今は一生懸命歯磨きしているんですけど、昔はほとんどできていなくて」
過去から現在にかけて、複数のリスクが重なってむし歯を繰り返していることがわかったんです。
それから、一緒に予防法を考えていきました。
「補綴が多くて歯ブラシが届きにくいかもしれないので、洗口液を取り入れてもいいかもしれませんね」
「歯ブラシ1本で磨くのが難しければ、ワンタフトというのもありますよ」
リスクを理解しているからか、「やってみたいです!」と言ってくれて。今はどれも習慣になっています。
患者さんの気持ちや行動、口腔内の状態がどんどんよくなっていくのを見ると、やっぱりうれしいですね。歯科衛生士として、“患者さんの歯を守るための仕事”ができている! と実感できるようになりました。
健康を守れる歯科衛生士を目指して
数年前までは、こんなふうに気持ちよく働けていませんでした。仕事自体は楽しかったのですが、ずっとモヤモヤを抱えていたんです。
メインテナンスで診ている方にむし歯ができてしまったり、来院のたびにトラブルが見つかったり。患者さんの口腔内をよくしたいのに、よくならない。自分のやったことが結果につながっていないように感じて、むなしい気持ちでいっぱいでした。
そんなある日、こが歯科医院が開業するという話を耳にしたんです。予防中心の医院で、患者さんとお話する時間もたっぷりとれると聞き、「ここで働いたらモヤモヤが解消されるかもしれない!」と就職することにしました。
結果的に、本当によかったと思います。患者さんのためになる提案ができるようになりましたから! 今はスッキリした気持ちで仕事に臨めています。
今後の目標は、患者さんから「健康でありたい」という気持ちを引き出すこと。まだまだ知識やコミュニケーション能力が足りないと感じるので、これからも勉強を続けて、本当に患者さんの健康を守れる歯科衛生士を目指して頑張ります!

最近は天気のいい日に自宅の庭にテントを張って子どもとのんびり過ごすのにハマってます。
暖かくて風が少しある日に過ごす外は気持ちよくて癒しの時間です。