「これって本当に予防……?」の疑問が転機に
私が歯科衛生士の仕事に興味をもったのは、高校生の頃でした。当時通っていた医院の衛生士さんが、とても親身になってくださる方で。歯ブラシの当て方とかどんな道具を使えばいいかとか、自分の口に合ったケアの方法や重要性を教えてくれたんです。それがおもしろくて、歯科医院に通うのが楽しくなりましたね。彼女を通して“歯科衛生士という職業”についても知ることができ、「歯科の看護師さん」「助手の人」というイメージだったのが、だんだん憧れの存在になっていきました。
ところが資格をとって実際に働き始めると、しっくりこないことがいろいろ出てきて……。たとえば医院として予防歯科を大々的に謳って、自分もそのつもりで取り組んではいるけれど、結局むし歯にさせてしまったり、歯周病になってしまったり。予防というより「なんとなく歯の寿命を延ばしている」というか、むし歯や歯周病の進行のスピードを遅らせているだけのような気がしてきたんです。患者さんと向き合えば向き合うほど、「これって本当に予防なのかな」という疑問が湧いていきましたね。
歯科衛生士さんの話が、過去の自分と重なる
20代半ばになり、これからの人生を真剣に考えるようになったとき、それまで勤めていた歯科医院を退職。再就職先の候補としてあがったのが、オーラルケアです。
オーラルケアでの仕事は毎日が新鮮ですよ。歯を守れる方法や論理を知ることができ、現場で抱えていた疑問が少しずつ解決していく感じがします。なかでも一番刺激を受けているのは、やっぱり現場の歯科衛生士さんたちと接すること。セミナーのアンケートを丁寧に書いてくださったり、困難を乗り越えながら頑張っていらしたり、みなさんの前向きな姿を見るたび胸がグッとなるんですよ。
もちろん、臨床での悩み事を相談してくださる方も。
「患者さんの健康を守りたいのにうまくいかない」
「働く環境に満足できない」
悩んでいる歯科衛生士さんたちの声を聞くと、同じような気持ちで働いていた過去の自分と重なりますね。自分の経験や新たに得た情報が一つでも現場の歯科衛生士さんの役に立つのなら、どんどん伝えていきたい。その思いが大きくなっていくんです。
横のつながりを作ることが、今の私の使命
以前、ある歯科衛生士さんがこんなことを言ってくださいました。
「タフトくらぶという場所を通して、他の医院がやっていることや歯科衛生士さんの考えを知ることができてうれしい。自分一人じゃないんだなって背中を押されます」
私は、現場の歯科衛生士さんの横のつながりを作れる真ん中の立場です。思うようにいかなくて悩んでいる方がいる一方で、この仕事の本当の楽しさを見出している方、困難を乗り越えながら何十年と続けていらっしゃる方もいます。歯科衛生士という仕事の明るい未来を見せてくれる仲間が実際の環境では近くにいなくても、タフトくらぶを通じて出会うことができる。その橋渡しをしていくことが、私の役目だと思うんです。
セミナーの内容に関しても私一人で作っているわけではなく、現場の歯科衛生士さんからいただいたヒントや実践例を盛り込んでいます。そうすることで後輩の数人にしか伝えられなかった考えが、何百人という人に届きますよね。いただいたものをより広い人に届け、歯科衛生士さんたちの横のつながりを作り、良き理解者として一緒に答えを導き出す。それが、今の自分の使命です。
編集部員レポート/編集部N