From Magazine/vol.161
歯周病と免疫力の関係を知る

歯周病の予防と改善方法をおさらいした前回。それに引き続いて今回は、歯周病についてもう1つの重要な要素である「免疫力」との関係性をしっかり見ていきます。

INDEX

1. 歯科の観点からも注目すべき免疫力

定期的にメインテナンスへ通っているのに、口腔内の状態がなかなか改善しない。フロスを欠かさないのに、歯肉が腫れている。「こんな症状の患者さん、いるなぁ」と思い当たる歯科衛生士も多いのではないでしょうか。こういう人は、もしかすると免疫力が低下しているのかもしれません。

新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、免疫力に注目が集まっているのはご存じのとおりです。免疫力が低下すると病気にかかりやすくなったり、長引く、繰り返すといったことが起こりやすくなります。免疫は全身の健康を支える大切な役割を担っている機能ですが、口腔内では特に歯周病と深く関わっています。歯科衛生士として見逃せないこの2つの関係性を、詳しく見ていきましょう。

2. 歯周病と免疫力の間には、密接な関係性が!

前回、歯の周りで増加した細菌が歯周病発症の原因になる、ということを学びなおしました。
ただ歯周病菌が増えれば必ず炎症が起きる、というわけではありません。その要因はさまざまですが、その中で一つ免疫細胞の効果が挙げられます。免疫細胞は歯周病菌が増えて悪さをしないよう、戦ってくれるのです。だから免疫力があれば細菌との戦いに勝ち、歯周病が発症しにくい健康な状態の口腔内をキープできます。(図A)

ところが免疫力が弱まっていると、免疫細胞は少ない数の細菌にも押し負けてしまい炎症が発生。(図B)それが長い間続くようになると、歯肉縁下で細菌と激しい攻防戦を繰り広げるようになるのです。この戦いによって歯肉の腫れや出血がひどくなり、口腔内の環境は悪化します。

また、歯槽骨が溶け始めることも大きな特徴です。この現象が起こるメカニズムの詳細はまだ明らかになっていませんが、一説では歯周病菌の感染がほかの部位に広がらないよう、免疫細胞が骨を溶かしているのではないかと考えられています。「トカゲの尻尾切り」のように、被害を最小限に食い止めるためのまさに苦肉の策と言えるでしょう。免疫力の強さは、歯周病の進行を左右する要素の一つなのです。

3. 免疫力を高める工夫が大切!

そんな大切な免疫力ですが、いつも良い状態であるとは限りません。下のグラフからわかる通り、免疫力は20代でピークを迎え、そこから少しずつ下がっていってしまいます。そして年齢が高くなるにつれて、歯周病患者の割合が増加。これも加齢によって免疫力が下がり、歯周病菌と戦えなくなったことが1つの理由として考えられます。

また患者さんの口腔内が急に悪化した場合、仕事や生活環境に免疫力が下がる原因ができたのかもしれません。すぐに「ちゃんとフロスをしましょう!」といった提案をするのではなく、まずは身の回りの変化からヒアリングしてみましょう。下にまとめた「免疫力を上げるもの・下げるもの」を参考に、当てはまるものがないか問いかけてみてください。
プラークフリーテクニックと免疫力、この2つの視点をまずは歯科衛生士自身が持つことが大切です。そのうえで患者さんに、両方をケアする提案や情報提供をしていきましょう。

参考文献

ビョルン・クリンゲ/アンダース・グスタフソン『トータルペリオドントロジー』

NPO法人 最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会『あの人のお口がにおったのはナゼ?

※発行元はすべて株式会社オーラルケア

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