From Magazine/vol.160
マスクをしているとき、口の中で何が起こっている?

出かけるとき、人と会うとき、マスクをするのが当たり前の時代になりました。マスクは飛沫を防いでくれるありがたい存在ですが、一方で多くの人が気づいていないマイナス面もあります。マスクをしていると、口を動かしておしゃべりする機会が減る。飲み物を飲むのがおっくうになる。その結果、口腔内のうるおいが減ってしまうのです!
そんな今の時期だからこそ、改めて勉強し直したいのが“唾液”について。唾液は歯の健康を守ってくれるだけでなく、全身の健康にもつながっています。お口の乾燥を防ぐことでどんなイイコトがあるのか、一緒に探っていきましょう。

INDEX

1. お口をしっかり機能させるためのうるおい

歯科衛生士学校で必ず習う唾液の作用。医院で働くようになってからも、「口腔内が乾燥しているかどうか」は必ずチェックするポイントの一つですよね。唾液には、お口をしっかり機能させるための作用がたくさんあります。なかでも歯科衛生士として意識するのは、①㏗の調整、②再石灰化、③自浄作用の3つではないでしょうか。せっかくなので、一度内容をおさらいしてみましょう。

pHの調整(緩衝能)
糖分を摂取するとミュータンス菌が酸を排出し、歯面のミネラルが溶けやすい状態になります。そこで活躍するのがこの力。唾液はややアルカリ性のため、口腔内を中性に戻します。このおかげで、歯が溶けにくい環境がつくられます。

再石灰化
口腔内が酸性に傾くと歯面のミネラルが溶け出し、結晶構造がスカスカに。そこにカルシウムイオンとリン酸イオンを補給し、エナメル質の結晶を新しく形成するのがこの力です。再石灰化の作用によって、歯面が溶けてもすぐ歯に穴があくということはありません。

自浄作用
食べかすや細菌を洗い流してくれるのがこの力。自浄作用が働きやすい部位(唾液が届きやすい部位)ほど細菌は洗い流され、酸もつくられにくくむし歯のリスクは低くなります。

歯を守る以外にも、食べ物を飲み込みやすくしたり、消化しやすくしたり。日常生活を支える力も重要ですよね。お口のうるおいは、患者さんにとっても歯科衛生士にとっても、元気に暮らしていくうえでなくてはならない要素です。

2. 細菌やウイルスに働きかける抗菌物質IgA

また、唾液の作用はこれだけではありません。全身の健康を守る力もあるのです。それが、“抗菌作用”! 口腔内は、外部と接する大きな粘膜です。外から細菌やウイルスが侵入したり、食べ物などの汚れで細菌が発生しやすい場所でもあります。そんな粘膜で活躍するのが、唾液に含まれる抗菌物質たちです。彼らは、人間にとって良くない細菌の細胞膜を破壊したり、ウイルスの成長を阻害したりと、人知れず私たちの健康を守ってくれています。

なかでも、今注目したいのがIgA(免疫グロブリンA)! この物質は、口腔内に細菌やウイルスなどの異物が侵入すると、見つけて取り囲み、粘膜への付着を防ぎます。そのあと異物は唾液の自浄作用によって洗い流されるので、私たちは元気に過ごすことができる。ウイルスとともに生活している私たちにとって、心強い味方なのです。口腔内のIgAを増やすには、まず唾液そのものを増やすことが大切です。常にマスクをしてうるおいが減っている今は特に、意識的に唾液を出すことが重要でしょう。

  • 豆知識
    IgAは唾液以外にも、涙腺や腸など身体のさまざまな部位に存在します。なかでもたくさんいるのが母乳! 生まれたばかりの赤ちゃんを守るのに重要な役割を果たしています。
  • tuftclub160号

3. 私たちの健康を支えるIgA

口腔内から体内に細菌・ウイルスが侵入するのを防ぐ、門番のような役割を担ってくれているIgA。具体的にどんなところがすごいのでしょうか?

たくさん分泌されている
唾液には100種類以上の物質が含まれています。そのなかの抗菌物質のうち、分泌量が一番多いのがIg A! 1日に50~100㎎も分泌されています。

いろんな細菌・ウイルスに働きかける
この物質のすごさは、その守備範囲の広さにあります。多くの抗菌物質は特定の細菌・ウイルスに働きかけますが、IgAは幅広い種類の異物に働きかけます。

風邪・インフルエンザの予防に有効
IgAが低下すると上気道感染症(いわゆる風邪)やインフルエンザにかかりやすいというデータが出ています。

IgAは身体のいたるところに存在しますが、細菌・ウイルスの侵入を防ぐという点で、注目したいのはやはり粘膜の面積が広い口腔内。マスクをして唾液が減りがちな今、積極的にIgAを増やし健康な毎日を目指しませんか?

参考文献

槻木恵一『ずっと健康でいたいなら唾液力をきたえなさい!』 扶桑社

槻木恵一『唾液サラネバ健康法』主婦と生活社

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