歯周病の流れを知ろう

歯肉に炎症が起きることから始まり、その炎症が最終的に歯を支える骨(歯槽骨)にまで広がる歯周病。日本人が歯を失う一番の原因ですが、その罹患率は長いあいだ改善していません。でも、本当は予防できる病気。原因や進行の仕組みをしっかりおさえることが、患者さんを健康へ導く第一歩になります。

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1.歯周病は“細菌感染症”

歯周病の原因はやはり、「細菌」です。歯周病菌の種類はひとつではなく複数で、特徴は酸素がニガテなこと!酸素の届かない歯肉縁下(歯と歯肉の境い目)に集まり、まるで仲間とスクラムを組むように「バイオフィルム」を形成します。

放っておくとバイオフィルム中の細菌はどんどん増加し、より強力な細菌も登場。歯と歯肉をつなぐ組織が壊され、歯周ポケットが深くなっていきます。細菌にとってますます居心地のいい環境ができるので、症状は悪化する一方……。負のスパイラルが起きてしまうのです。

でもこうして、原因がきちんとわかっているのは朗報! なぜなら、日ごろから原因(=細菌)をきちんと取り除いておけば、健康な状態をキープできるということだからです。「歯周病は本来、稀な疾患である」と言われる理由もまさにそこにあります。

実際、ある有名な研究※では、被験者に21日間口腔ケアを控えさせたところ、10日~21日ですべての人が歯肉炎を発症。その後、ケアを再開して細菌を取り除くと、歯肉炎はなくなった、という結果が出ています!

2.「歯肉炎」と「歯周炎」

「歯周病」と一言でいっても、実は「歯肉炎」と「歯周炎」二つの状態があるのを知っていますか?

「歯肉炎」は歯周病の初期段階。文字どおり、歯肉だけが炎症を起こしている状態です。歯肉の縁が赤くなったり、ブラッシングで出血したりします。

そして、歯肉炎を放置し続けたときに起きるのが「歯周炎」。歯周ポケットが深くなり、歯肉はブヨブヨ。歯槽骨が溶けて歯が動揺していることもあります。歯の周りの組織が破壊されるので、この名前がついています。一般の人は、歯周病といえばこの歯周炎の状態をイメージしているケースが多いかもしれません。

歯周病は「サイレント・ディジーズ」と呼ばれ、知らないうちに進行してしまう病気。よほどひどくならない限り、痛みもありません。だからこそ、歯周病の初期症状「歯肉炎」をきちんと見極めることが大切です。

3.歯肉炎を見逃さない!

「歯肉炎」は歯周病の初期症状であり、“黄色信号”です。このとき、炎症の原因となっている歯肉周辺のバイオフィルムを放置すれば、徐々に「歯周炎」に進行。こうなると、もう元の健康な状態には戻せません。でも逆に、バイオフィルムをきちんと取り除くようにすれば、健康な状態に戻すことが可能!「歯肉炎」を見逃さないことが重要なのです。

【歯肉炎の特徴】
・歯ぐきの縁が、他の場所より赤くなる(健康な時は薄いピンク)
・歯ぐきの縁が腫れる
・歯間乳頭が丸みをおびる
・歯磨きやプロービングで出血する
・固いものをかじったときに出血する

歯肉炎は、健康をキープできるかそうでないかの重大な分かれ道。「歯肉がちょっと腫れているだけだから大丈夫」ではなく、「今こそ気をつけてケアすべきとき」です。歯肉縁上・縁下をきちんとクリーニングすると同時に、細菌をしっかり落とせるセルフケアを案内しましょう。

予防のヒント

ほとんどの歯肉炎はバイオフィルムの付着によって起きますが、他の理由で起きることもあります。

  • 妊娠期や思春期、生理中など、ホルモンの変化
  • 花粉症などのアレルギー

どうして歯肉炎が起きているのかは一人ひとり違います。これまでのプラークコントロールの状況はどうだったか。日常生活でなにか変わったことはなかったかなど。しっかりヒアリングしたうえで判断することが大切です。

4.歯周病とデンタルフロス

「歯周炎」を起こしているときは歯科衛生士がSRPを行ない、歯周ポケット内の歯石除去を行なう必要があります。でも「歯肉炎」なら、患者さん自身が自分でケアしたり予防したりできます。そのために欠かせないのが“デンタルフロス”!

みなさんは普段、デンタルフロスを何のために使っていますか? そしてどこを清掃する道具だと思いますか?

デンタルフロスはよく、コンタクトポイントを清掃するむし歯予防のアイテムだと思われがちです。でも実は、それだけではありません。メインはむしろ歯周病予防!歯肉炎の原因となる歯肉縁上・縁下1~2ミリの細菌を掻き出すための道具なのです。

患者さんが1日に一回、歯肉縁上・縁下の細菌を落とすことができれば、歯肉炎は起きにくくなります。また、起きたとしても継続することですぐに症状がおさまります。

日本ではまだ習慣にしている人は多くありませんが、今後増えていけばそのぶん、歯周病の罹患率も減っていくはず。デンタルフロスの提案は、歯科衛生士にとって最もやりがいのある挑戦の一つではないでしょうか!

おさらい

  • 歯周病は、“細菌感染症”である
  • 「歯肉炎」と「歯周炎」二つの状態がある
  • 「歯肉炎」は元の健康な状態に戻すことができる
  • 歯肉炎を見逃さないことがとても重要
参考文献

ビョルン・クリンゲ/アンダース・グスタフソン『スウェーデンのすべての歯科医師・歯科衛生士が学ぶ トータルペリオドントロジー』