目に見えないリスクを知る! だ液検査

カリエス予防に欠かせないのが、その人がなぜむし歯になるのか知っておくこと。そしてその原因を知る手助けになるのが、だ液検査です。この検査を活用することで、”目に見えないリスク“まで知ることができます。

index

1.一人ひとりのリスクに目を向ける

ミュータンス菌に感染し、バイオフィルムができ、酸が排出される。そこで再石灰化が追い付かないと歯が溶け、いずれ目に見える穴になってしまう。言葉にすると単純ですが、穴があくまでにはさまざまな要因が絡み合っていることがわかります。ミュータンス菌の量、磨き残しの量、糖分の摂取頻度、唾液の量や質、そして歯質や歯並び……。

患者さんの歯を守っていくために必要なのは、こうした数あるむし歯の原因から“その人にとって何が1番の原因か”探ることです。

上手にプラークコントロールできているけれどむし歯を繰り返してしまう方は、磨き方以外にリスクがあるはず。一人ひとりのリスクに合わせた対策が必須です。

2.見えないリスクを知る「だ液検査」

では、どうやってその人のリスクを突き止めるのか?
病院では問診や触診だけではなく、血液検査や尿検査、レントゲン撮影などを行なったうえで治療に進みますよね。目に見えないリスクまで把握し、どんなケアをしたらいいか探ることが、歯科医院でも大切です。

それを可能にしてくれるのが、 “だ液検査”。この検査をすることで、ミュータンス菌とラクトバチラス菌の量、唾液の量、唾液の力など、口腔内を見ただけではわからないリスクを知ることができます。

さらに染め出し、食生活アンケートを行なえば、口腔内に残っているバイオフィルムの量や糖分の摂取頻度も判明。何が原因でむし歯になっているかを知るヒントになるのです。

3.大切なのは患者さんが理解すること

こうした検査を行なううえで、気をつけたいのが「医院側の情報収集」で終わらせないこと。

『デントカルト』というだ液検査を生み出した、故ダグラス・ブラッタール教授はこんな言葉を残しています。

なぜむし歯ができるのか山ほど論文を書いてきたけれど、患者さんがカリオロジーを理解できなければ意味がない

歯を守るのは患者さん自身です。自分でむし歯の原因を理解し、ケアの内容にも納得しないと、日々のセルフケアは継続できません。
検査の結果は患者さんと一緒に確認し、わからないことはその場でクリアにしましょう。カリオロジーを理解してもらうことが、患者さんを健康へ導くための大切なポイントです。

4.リスクに合わせたケアのアイディア

原因が人それぞれ異なるように、予防方法も異なります。患者さんと一緒に話し合い、できそうなものから取り入れてもらいましょう。

●細菌数が多い
定期的にバイオフィルムを取り除くだけでなく、細菌の質を変える、口腔内全体の細菌数を減らすといったケアも有効です。
・定期的にPMTC、トリートメントケアを受けてもらう
・ハイドロキシアパタイト入りの歯磨剤を使う
・フッ化第一スズを使う
・キシリトールを取り入れる

●糖分の摂取頻度が高い
ただ摂取頻度を減らすのはなかなか難しいもの。糖分の代わりになるものを提案するなどの工夫が必要です。
・デザート(間食)は朝・昼・夜の食事と一緒に摂る
(食後30分以内の間食であれば1回の食事とカウントされます)
・むし歯の原因になりにくいものと食べる
(チーズ、ナッツ類、無糖、代用甘味料を使ったものなど)

●唾液の量が少ない
年齢や薬などの影響でも唾液量は少なくなります。何が原因で量が少ないのかも探りながら、その人に合った対策を見つけましょう。
・水分をひんぱんに飲んで口腔内をうるおす
・硬いガムを噛む
・必要であれば保湿剤を使う

●磨き残しが多い
磨き残しは、毎日のセルフケアで減らすことができます。患者さんと一緒に残りやすい部位を確認し、少しずつケアできる範囲を広げていきましょう。
・PMTCで口腔内を一旦リセットし、コントロールしやすい状態にする
・特にリスクの高い部位を染め出しなどから見つけ、そこからケアしていく

むし歯の原因の多くは生活とリンクしており、ある種の生活習慣病と言えます。「こういうケアをしたら状態が良くなる」とわかっても、実際に生活を変えることは簡単ではありません。無理にすべてを変えようとせず、患者さんと相談してできるところから始めてみましょう。

おさらい

  • その人にとって“一番のリスク”を探ることが予防の第一歩
  • 口腔内のリスクだけでなく、見えないリスクにも目を向ける
  • リスクを患者さんも理解できるようにする
参考文献

関山牧枝『むし歯と歯周病の病因論』

ベンクト・オロフ・ハンソン/ダン・エリクソン『トータルカリオロジー』

発行元はすべてオーラルケア