歯周病の「なりやすさ」に目を向ける ロイ・C・ペイジ
歯周病を引き起こすのは、歯肉縁下に存在する細菌。しかし細菌に感染したからといって、必ずしも全員が発症するわけではありません。患者さん一人ひとりの「なりやすさ」が大きく関わってきます。この「なりやすさ」に注目し、ツールを開発したのが元ワシントン大学歯学部のロイ・ペイジです。
1.歯周病に罹る人・罹らない人
長年歯周病患者さんを研究してきたロイ・ペイジ。歯周病の原因は一人ひとり違うので、人によって違う原因を明らかにすることが予防には欠かせないと気づきます。
「口腔衛生状態が良くても歯周病になる方や、悪くてもならない方がいるのはなぜか。それは発症の原因の8割が“その人自身”にあるからだ」
2.将来に向けての行動が変わる
そこでペイジは歯周病専門医たちと研究を進め、10年の年月をかけて口腔内の状況を客観的に表示するソフト『OHIS』を開発します。
医院での検査や問診の内容を入力することで、将来口腔内がどうなっていくのかを患者さんにイメージしてもらい、歯周病予防につながる行動を促すツールです。
たとえば、今の状態・将来の予測を客観的なデータとして見せることで説得力が増し、患者さんが今後の対策に目を向けやすくなります。初期治療を終えても「炎症が消えたから安心」で終わらず、「また悪くならないためにどうしたらいいか」を考えるようになるのです。
実際にアメリカで『OHIS』を使用したペイジは、患者さんの変化をこう語ります。
「多くの人が自分の将来を知りたがり、歯周病になるリスクを回避するためにドクターや歯科衛生士の提案を積極的に受け入れるようになった」
このままでは歯を失うかもしれない……。その危機感をきっかけに生活習慣を改善し、セルフケアに熱心に取り組むようになったのです。
Roy C. Page
ロイ・C・ペイジ
元ワシントン大学歯学部教授。歯科疾患に関するリスク評価の研究を長年続けてきた。近年では米国ワシントン州にあるPreViser社で、歯周病専門医チームの一員として「歯周病のリスク評価に関する手法」の研究を行なっている。『OHIS』の開発者。